東京高等裁判所 平成2年(行コ)173号 判決 1991年10月08日
神奈川県川崎市中原区木月七〇七番地
控訴人
宝徳不動産有限会社
代表取締役
加東正收
訴訟代理人弁護士
近藤繁雄
神奈川県川崎市高津区久本二六九番一号
被控訴人
川崎北税務署長 山口英三
訴訟代理人弁護士
和田衛
指定代理人
杦田喜逸
同
佐藤一益
同
梅津恭男
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者双方の申立て
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和五九年三月二八日付でした
(一) 控訴人の昭和五四年二月一日から昭和五五年一月三一日までの事業年度以後の法人税の青色申告承認の取消処分
(二) 控訴人の右事業年度の法人税の更正処分のうち、所得金額五五八八万三七七九円、課税土地譲渡利益金額七九六〇万円を超える部分
(三) 重加算税の賦課決定処分
をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二当事者双方の主張
当事者双方の事実上の主張は、次のように付加するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。
一 被控訴人
控訴人は、当審における第三回口頭弁論期日において、本田技研に本件資産を四億円で売り渡した事実を自白したが、のちにこれを撤回した。被控訴人は、右自白の撤回に異議がある。
二 控訴人
1 控訴人が右の趣旨の自白をしたことはない。
2 仮に、控訴人が松本工業に対する本件資産の売却により収受した金員が、その契約書上の代金額である二億五〇〇〇万円のみではなかったとしても、控訴人が受領したのは四億円ではなく、三億四八〇〇万円に過ぎなかったから、譲渡益の計上洩れは九八〇〇万円に過ぎない。
第三証拠関係
原審及び当審における証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も控訴人の本訴請求は理由がなくこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。
(1) 原判決一〇枚目表三行目の「後記認定」の前に「原審及び当審、」を加える。
(2) 同一一枚目表三行目の「購入することに決定したものであり」を「購入する意思を固め」と改め、同末行の「本田技研は」の次に「購入を決定する」を加える。
(3) 同一二枚目裏四行目の「原告代表者尋問の結果」の次に「(原審及び当審)」を加える。
(4) 同一四枚目表二行目の「即座に」の次に「一部を残して」を加え、同三行目の「松本」から「及び」までを削り、同五行目の「総合すれば」の次に「控訴人と松本との」を加え、同六行目の「松本」から七行目の「明らかなので」までを「松本は、本件資産を転売した形式をとることにつき松本工業を名義上の当事者として協力し、これに対する報酬を、土橋登及び大澤康男は、右転売の外形を整えることによりこれに協力し、これに対する報酬をそれぞれ取得したことが明らかであるから」と、同七行目から八行目の「原告が行ったもの」を「控訴人にこれを帰属させるために控訴人又は松本が行ったもの」とそれぞれ改め、同九行目の「原告は、」の次に「原審において、」を加える。
(5) 同一四枚目裏二行目の「ある等主張し」から同三行目の「これは」までを「あると供述し、当審においては、右供述を翻して、松本工業が本田技研に本件資産を四億円で転売することは松本工業に売却する前から知っていたが、自分は本田技研に売却したのではなく松本工業に三億五〇〇〇万円で売却したのであり、松本工業からは三億四八〇〇万円しか受領していないから、本件資産の譲渡益の計上洩れは九八〇〇万円であると供述するに至ったが、これら供述はいずれも」と、同四行目の「原告の」から同一五枚目表一〇行目末尾までを「控訴人の原審における右供述は、控訴人自らが右のとおり供述を翻したこと自体に照らして採用することができない。また、当審における右供述は、本件証拠上控訴人が松本工業に三億五〇〇〇万円で売却したことを裏付ける契約書その他のこれを証明する書類が存在しないこと及び前認定の金員の授受の経緯に照らし、とうてい採用することができない。そして、控訴人が二億五〇〇〇万円で本件資産を売却したにもかかわらず、その対価等として三億四八〇〇万円を受領したものと認めることも、右イ、ロで認定した事実からすれば困難であるというのほかはない。」とそれぞれ改める。
(6) なお、被控訴人は、本件資産の売買の当事者及びその価額につき控訴人に自白があったと主張するところ、当審の第三回口頭弁論期日において陳述された控訴人の準備書面には、そのように読み取れるような記載がみられるけれども、右書面の全体を通じてその主張の本旨を考慮すれば、右の記載は、書証の形式上の突き合わせから、被控訴人の主張のように認められる余地があっても、他の証拠によって結局その事実が否定されるべきであるとの主張をするものと理解されるから、右の点につき被控訴人主張の自白があったということはできない。
二 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 橘勝治 裁判官 小川克介 裁判官 市村陽典)